冷酷に見えるゲンドウも、心の隙間をユイで埋めたかった


エヴァンゲリヲン新劇場版:破より

 

ゲンドウはあまり話さないし,感情もほとんど出さない。
この人感情あるんでしょうか・・・? って思うほど無表情だ。

 

人間で感情無い人っていないと思うけど、感情を封印してる人ならいるかもしれない。

 

ゲンドウはテレビシリーズでは、心が揺らぐことほとんどないけど、エヴァンゲリオン【破】では、心がフッと動く場面がある。

 

綾波レイが ゲンドウを 食事会に誘うところ。
レイとゲンドウのシーン。ゲンドウの一言から始まる。

 

 

ゲンドウにとって心の隙間を埋めてくれるのは、ユイだけだった

 

ゲンドウ 
「レイ 食事にしよう」
2人は食卓につくけどレイのテーブルには食べ物ではなく、薬とサプリメントのようなものしかない。 

レイ   
「碇指令」

ゲンドウ 
「なんだ?」

レイ   
「食事って 楽しいですか?」

ゲンドウ 
「ああ」

レイ   
「誰かと一緒に食べるって うれしいですか?」

ゲンドウ 
「ああ」

レイ   
「料理って 作ると喜ぶですか?」

ゲンドウ 
「ああ」

レイ   
「碇指令、今度 碇君やみんなと 食事 どうですか?」

ゲンドウ 
「いや その時間・・・・・」
この時 ゲンドウには レイがユイに見えるんだ。
      
そして ユイに言われる。 
「あなた シンジを・・・」
このあと レイを見つめて
      
ゲンドウ
「わかった いこう」思わず 言ってしまう。

 

テレビシリーズにはないゲンドウだ。

 

ゲンドウのあの感じなら、食事会なんかに行くはずない感じだし、他人と話すのキライみたいだし、いつも「ああ」とかしか言わない。


冬月先生とも、そんなに立て込んだ話してることはほとんどないし、いつも必要最低限の会話しかしないイメージだ。

 

そのゲンドウがレイの誘いに対して、思わず
「わかった いこう」って言ってしまう。
まあ断ろうとしてたけど、ちょっと驚きだ。

 

レイに対して
「いや その時間・・・・」
って断ろうとした時に、レイの顔がユイに見えてしまう。

 

そしてそのユイに
「あなた シンジを・・・」と言われてしまう。

 

ユイの言葉に、思わず
「わかった いこう」って言ってしまう。

 

若い頃から変わり者とみんなに言われていたゲンドウ。
ユイがなんでゲンドウと結婚したのか、冬月先生でさえ不思議がっている。

 

冬月先生はユイのことを、優秀だといって評価も高かったし、あの優秀なユイが変わり者のゲンドウと、なんで・・・?って感じになるのはみんな同じだろう。ユイからの結婚報告にも凄く驚いていたのもうなづける。

 

他人から見ると、わけわからないってことでも、本人同士にしかわからない何かがあるんだろう。

 

ユイはゲンドウの何にひかれて結婚したのかわからないけど、ユイにとっては、この人と結婚しようと思う何かがあったんだろう。


変わり者で人付き合いもほとんどしないゲンドウにとっては、はじめての関係だったといえるだろう。ゲンドウにしてみれば、はじめてきちんと関わってくれたのがユイだったのかもしれない。 

 

ゲンドウにとって、心の隙間を埋めてくれるユイは、他にはいない唯一の女性になったんだろう。

 

実験でユイが亡くなってからも、ユイのことを忘れられるはずもなく、レイの顔がユイに見えて
「あなた シンジを・・・」って言われてしまう。

 

この瞬間にゲンドウの心が揺らぐ。ほとんど心が動くように見えないゲンドウでも、心が揺らぐんだ。

 

感情が無いように見えても、本人が気付いていようが気付いてなかろうが、心に何かがふれることがある。

 

ゲンドウに何があって変わり者と言われるようになったのか、その詳細は解らないけど、どんな人にも心が揺らぐ瞬間がある。

 

心が揺らいだり、感情的になって怒ったり泣いたり、人ならではのものなんだろう。

感情心理学ハンドブック

 

自分以外のモノや人で心の隙間を埋めようとすると、ずっと求め続けることになる

 

ゲンドウにとって、満たされない心の隙間を埋められるのは、ユイしかいないと思っていただろうし、人類補完計画までも、ユイに再会するための道具だったのかもしれない。

人類補完計画、碇ゲンドウの場合

 

人は自分の満たされない部分を外に求めがちだ。寂しければ、彼氏や彼女を作ったり、買い物で満足感を得ようとしたりする。それはあまり認識することなく無意識で行うことが多い。


外に求めれば、求めたものが手に入った時には見た目にもわかりやすいし、満たされて満足できたように感じる。

 

ただそれが人だった場合、人間関係がうまくいかなくなれば離れていく可能性が高いし、モノだった場合でも時間がたてばまた次に欲しいものが出てくる。

 

人が離れていけば、また他の人を求めることになるし、モノでも際限なくほしいものが無くなることはないだろう。

 

満たされない部分を自分以外に求めれば、結局延々と求め続けることになる。

 

自分で自分を満たすことが出来れば、求め続けることはなくなると思うが、この自分の隙間を自分自身で満たす、ということがなかなかできないのが人の常だ。

 

ただ、自分自身の隙間を自分自身で満たすことが出来たら、そこで完結してしまう可能性もあり、人として何かを求めて行動するモチベーションが著しく低下する可能性もあるわけで、結局は自分がどんな求め方をするかの選択肢があるだけなのかもしれない。

 

どうしても「心が満たされない」人たち