ヴィレに回収されたシンジ、理解すらできない状況の中で何を信じればいいか分からない

 

エヴァンゲリヲン新劇場版:Qより

 

ヴィレに回収されて訳の分からないシンジは、窓の外に2号機を見る

 

 

ビィレに回収され目覚めたシンジは、状況すら把握できない

 

シンジ
「あっ、やっぱりエヴァ2号機 よかった。無事だったんだ、アスカ。ミサトさん 僕は?」

ミサト
「全艦第一種戦闘配置」

リツコ
「戦闘指揮系統を移行、主要員は戦鬪艦橋へ

ミサト
「重力バラスト準備」

長良
「了解 全ベントをチェック」

ミサト
「艦の主制御をアンカリングプラグへ集中」

高雄
「了解 ディセント準備 インジェクター確認 カウント入ります」

アナウンス:ヒルムシュタムタワー 移動準備

シンジ
「ミサトさん!初号機 ここにあるんでしょ 僕も乗ります。 アスカを手伝います!僕は乗らなくていいんですか? ミサトさん!」

アナウンス:プラグ内 電荷用意 エントリーを準備

リツコ
「そうよ あなたがエヴァに乗る必要はありません」

アナウンス:ヒルムシュタムタワー分離 移動開始 現在指揮系統を戦鬪艦橋へ移行中

シンジ
「必要ないって・・・あの じゃあ僕は何をすればいいんですか?ミサトさん」

ミサト
「碇シンジくん あなたはもう 何もしないで」

シンジにしてみれば、サードインパクトから14年たっていることも、今の状況も何もわからず、2号機が出ていくのに、ミサトもリツコもエヴァに乗らなくていいと言う。

 

そしてリツコからの説明がはじまる。

サクラ
「検体BM03 仮称 碇シンジさん、副長から説明があるそうです」

シンジ
「これが初号機?」

リツコ
「ええ、初号機は現在本艦の宗機として使用中、ゆえにパイロットは不要です」

シンジ
「ホントにいらないんですね」

リツコ
「それとー あなたの深層シンクロテストの結果が出ました。シンクロ率は0,00%、仮にあなたがエヴァに搭乗しても起動しません」

サクラ
「そっかあ、よかったですね 碇さん」

リツコ
「とはいえ、先に突如12秒間もー 覚醒状態と化した事実は看過できない、ゆえにあなたにはー DSSチョカーを装着させてあります」

シンジ
「何ですか、これ?

リツコ
「私たちへの保険、覚醒回避にための物理的安全装置、私たちの不信とあなたへの罰の象徴です」

シンジ
「どういうことですか?」

リツコ
「エヴァ搭乗時、自己の感情に飲み込まれ覚醒リスクを抑えられない事態に達した場合、あなたの一命をもってせき止めるということです」

シンジ
「それって・・・死ぬってことですか?」

リツコ
「否定はしません」

シンジ
「そんな・・・ミサトさん、どういうことなんですか?死ぬって変ですよ、ミサトさん!急にこんなことになっててワケわかんないですよっ!」

リツコ
「混乱するのも無理ないわ 少尉」

サクラ
「あ、ハイ」

リツコ
「彼に官姓名を」

サクラ
「ハイえっと、いまさらですが碇さんの管理担当医官、鈴原サクラ少尉です。よろしくです」

シンジ
「あ、ハイ でも”鈴原”って、トウジの?」

サクラ
「あ はい、お兄ちゃんがお世話になりました。妹のサクラです」

シンジ
「妹?お姉さんじゃなくて?」

サクラ
「ハイ 妹です フッ」

シンジ
「妹?なんで?」

アスカ
「あれから14年たってるってことよ、バカシンジ」

シンジ
「えっ?あっ アスカ?よかった、やっぱり無事だったんだね、アスカッ!あはっ わっ」

アスカ(ガラス越しにシンジを殴る)
「ダメね、抑えきれない、ずーっと我慢してたし」

シンジ
「何なんだよ・・・」

アスカ
「怒りと悲しみの累積」

シンジ
「何のことだよ、あれ?アスカ 左目?」

アスカ
「あんたには関係ない」

シンジ
「アスカ さっき14年って・・・でも眼帯以外 変わってない?」

アスカ
「そう エヴァの呪縛」

シンジ
「呪縛?ちょっと待ってよ、アスカなら知ってんだろ?ねぇ、綾波はどこなんだよ?」

アスカ
「知らない」

シンジ
「しらないって、助けたんだよ あの時!」

アスカ
「ヒト1人に大げさね、もうそんなことに反応してるヒマなんてないのよ、この世界には そうでしょ、葛城大佐」

シンジ
「アスカッ!ミサトさん、綾波はどこなんですか?教えてください!」

ミサト
「シンジ君 綾波レイはもう存在しないのよ」

シンジ
「いいえ 確かに助け出したんです!きっとまだ初号機のプラグの中にいます よく探してくださいっ!」

リツコ
「当然 すでに初号機内は全て探索済みです。結果 発見されたのはあなたと・・・なぜか、これが復元されていたわ(ミュージックプレーヤー)検査結果に問題ないので返還しておきます」

シンジ
「父さんの・・・あの時 綾波が持っていた・・・やっぱり助けたんじゃないか」

 

状況把握ができないシンジ、心の振り子は左右に大きく振れる

 

弐号機を見て
「あっ、やっぱりエヴァ2号機 よかった。無事だったんだ、アスカ」

 

内心ホッとしたのもつかの間、ミサトにはシンジの言葉を無視するようにブンダーの乗組員に指示を出す。

 

シンジの必死の呼びかけ
「ミサトさん!初号機 ここにあるんでしょ 僕も乗ります。アスカを手伝います!僕は乗らなくていいんですか? ミサトさん!」にも

 

ミサトは答えてくれない。ミサトにとっては答えようもなかったと思うわれるが、シンジにはミサトの事情など分かるはずもない。

 

見かねたリツコが
「そうよ あなたがエヴァに乗る必要はありません」と言われてしまい

 

2号機が出ていくのに自分がエヴァにのらなくていい意味はさっぱり分からないし、ミサトにまで
「碇シンジくん あなたはもう 何もしないで」と言われてしまう。

 

目覚めたとたんにアスカの弐号機を見て安心したと思ったら、ミサトやリツコの反応は、今までシンジの記憶の中にあるものとはまるで違い、エヴァに乗らなくていいと言われる。

 

何を信じたらいいのかわからないシンジの心は、自分の記憶と現実との間で、左右に大きく振れる。

 

老子の教え エッセンシャル版

 

リツコの説明は、シンジにとって受け入れがたいものでしかない

 

リツコの説明で
「ええ、初号機は現在本艦の宗機として使用中、ゆえにパイロットは不要です」
と言われ

 

「ホントにいらないんですね」
やっぱり自分なんていらないんだという思いが沸き上がる。

 

「それとー あなたの深層シンクロテストの結果が出ました。シンクロ率は0,00%、仮にあなたがエヴァに搭乗しても起動しません」

 

と言われても、シンジにとって実感は何もない。

 

リツコの説明「とはいえ、先に突如12秒間もー 覚醒状態と化した事実は看過できない、ゆえにあなたにはー DSSチョカーを装着させてあります」これもシンジにとっては、自覚もなければ記憶もないことでしかない。

 

DSSチョカーのことを質問するシンジに対して、追い打ちをかけるように「私たちへの保険、覚醒回避にための物理的安全装置、私たちの不信とあなたへの罰の象徴です」と言われてしまう。

 

説明を求めても
「エヴァ搭乗時、自己の感情に飲み込まれ覚醒リスクを抑えられない事態に達した場合、あなたの一命をもってせき止めるということです」

 

この言葉はシンジにとっては
「それって・・・死ぬってことですか?」と疑問に思うのは当然でしかない。

 

「そんな・・・ミサトさん、どういうことなんですか?死ぬって変ですよ、ミサトさん!急にこんなことになっててワケわかんないですよっ!」

 

となるのは当たり前で、もうこの時点でパニックなのに、サクラにはトウジの妹だと言われ

 

アスカには
「あれから14年たってるってことよ、バカシンジ」と言われてしまう。

 

老子の教え あるがままに生きる

 

シンジ自身何を信じればいいか、それさえ揺らぎそうになる

 

目の前にいるミサトとリツコをみれば、確かに14年たってるかも?と思えるが、アスカは眼帯以外何も変わって見えない。何を信じていいのかさえ分からなくなえる。

 

「アスカ さっき14年って・・・でも眼帯以外 変わってない?」
と聞いても

 

「そう エヴァの呪縛」と返されるだけだ。

 

エヴァの呪縛?が何のことかも、何を言っているのかもまるで理解出来るわけもない。

 

シンジにとってレイを助けることは、生まれて初めて自らの心に従って行動したことだから、記憶は鮮明だ。

 

「アスカッ!ミサトさん、綾波はどこなんですか?教えてください!」
の問いにもミサトの答えは

 

「シンジ君 綾波レイはもう存在しないのよ」だ。

 

納得いかないシンジはさらに
「いいえ 確かに助け出したんです!きっとまだ初号機のプラグの中にいます よく探してくださいっ!」と食い下がるが

 

リツコからは
「当然 すでに初号機内は全て探索済みです。結果 発見されたのはあなたと・・・なぜか、これが復元されていたわ(ミュージックプレーヤー)検査結果に問題ないので返還しておきます」
と言われてしまう。

 

リツコから渡されたミュージックプレーヤーを見たシンジは、自分の記憶が正しかったことを確信するが、レイがもういないということは何も納得できない。

 

シンジにしてみれば、確かにあの時レイを助けたという記憶が鮮明によみがえる。何を信じていいのか揺らいでいるときに、やはり自分の記憶は正しかったんだと納得できたのかもしれない。

 

人の記憶は自分の都合のいいように、なかったことにしたり塗り替えたりすることがある。これは生きていくうえでの防衛反応のようなものだったりする。

 

わかりやすいのは、虐待を受けていた子どもが、記憶の一部を亡くしているというのはよくあることだ。

 

シンジのような立場にいきなり身を置かれたら、大人でもパニックになるだろうし、心が壊れないように防衛反応が働き、記憶のすり替えや塗り替えが起こってもおかしくはない。

 

人の思考や心の仕組みは、今の時代でさえ解明されていることが少ない。

 

奴隷の哲学者エピクテトス 人生の授業――この生きづらい世の中で「よく生きる」ために