カヲルはシンジの指南役か?


エヴァンゲリヲン新劇場版:Qより

 

ヴィレから綾波と共にネルフへやってきたシンジ。
だがそこは、シンジが知っているネルフとはまるで違っていた。

 

その状況に何も納得できず、14年の間に何があったか知りたいシンジはカヲルとともに、シンジの知りたい真実を見に行く。雲が切れた目の前の現実に息をのむシンジ。

 

 

カヲルはシンジのハイヤーセルフ的存在

 

シンジ
「何だ これ?」

カヲル
「君が初号機と同化している間に起こったー サードインパクトの結果だよ」

シンジ
「これじゃ・・・街のみんなは」

カヲル
「この星で大量絶滅は珍しい事じゃない むしろ進化を促す面もある。生命とは本来 世界に合わせて 自らを変えていく存在だからね。しかし リリンは自らではなく 世界のほうを変えていく。だから 自らを人工的に進化させるための儀式を起こした。古の生命体をニエとし 生命の実を与えた新たな生命体を作り出すためにね。全てが太鼓よりプログラムされていた絶滅行動だ。ネルフでは人類補完計画と呼んでいたよ」

シンジ
「ネルフが これを・・・父さんは何をやってるんだ」

カヲル
「碇シンジ君、一度 覚醒しガフの扉を開いたエヴァ初号機は サードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言う ニアーサードインパクト、全てのきっかけは 君なんだよ」

シンジ
「違う 僕はただ 綾波を助けたかっただけだ」

カヲル
「そうだね しかし それが原因だよ」

シンジ
「そんな・・・僕は知らないよ!
そんな事 急に言われたって どうしようもないよ!!」

カヲル
「そう どうしようもない君の過去 君が知りたかった真実だ。結果として リリンは君に罪の代償を与えた。それが その首のモノじゃないのかい?」

シンジ
「は・・・罪だなんて。何もしてないよ!僕は関係ないよっ!!」

カヲル
「君になくても他人からはあるのさ。ただ・・・償えない罪はない。希望は残っているよ どんなときにもね」

シンジ
「あぁ」(頭を抱えてしまう)

 

確か、カヲルは完全なシンジをイメージしていると聞いた記憶があるが、もしそうだとしたら カヲルはシンジのハイヤーセルフ的存在になる。

 

ハイヤーセルフとは高次の自己で、アメリカで1980年代に隆盛した「ニューエイジ運動」の中で使われるようになった名称である。そしてキリストの天使は、現代のトランスパーソナル心理学における「より高度な自己(ハイヤー・セルフ)」や、ヴェーダーンタ哲学の「アートマン」、と同一である。

ハイヤーセルフ: 高次自己

 

カヲルの伝える事実は シンジにとっては残酷だ

 

カヲルがシンジに語り掛けるときは、いつも淡々とした様子で感情を入れずに事実を話している。それがシンジにとって受け入れがたい現実でも変わることがない。

 

シンジは綾波を助けたかっただけなのに、カヲルはさらっと
「そうだね しかし それが原因だよ」と答えている。

 

そこにシンジに対して肯定も否定もしていない。

 

「そんな・・・僕は知らないよ!そんな事 急に言われたって どうしようもないよ!!」にも

 

「そう どうしようもない君の過去 君が知りたかった真実だ。結果として リリンは君に罪の代償を与えた。それが その首のモノじゃないのかい?」と答える。

 

いかにもシンジに対して現実を教えている感じだ。

 

「は・・・罪だなんて。何もしてないよ!僕は関係ないよっ!!」に対しては

 

「君になくても他人からはあるのさ。ただ・・・償えない罪はない希望は残っているよ どんなときにもね」と。

 

自分の気持ちに正直になり行動したら、それが罪になる。自分の気持ちに正直なことは罪でもなんでもないのに、それがきっかけになってしまったことで、他人から見れば罪にしかならない。結果シンジが罪を犯したことになってしまう。

 

もうこうなると運命としか言えなくなる。

 

現実でシンジのような体験はすることはないが「冤罪」という言葉があるわけで、人知れず運命に翻弄される人は少なからずいるのが現実だ。

 

シンジ自身罪を犯したとは思っていなくても、周りから罪だと言われれば、きっかけを作ってしまった以上何とかしたいと思うのも当然なのかもしれない。

 

カヲルの
「希望は残っているよ どんなときにもね」
にすがりたくなるのも自然なことかもしれない。

 

そしてカヲルの言う
「ネルフの人類補完計画」
「全てが太鼓よりプログラムされていた絶滅行動だ」


プログラムされているなら 変えようがないのではないかと思えるが、どんなときにもイレギュラーはあり得るのか、この世界の理(ことわり)だとしたらあまりにも理不尽だ。

 

ただ、カヲルがこの世の秘密をどこま知っているか 気になるところではある。

 

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