ユイの真意はどこに?混乱するだけのシンジ

 

エヴァンゲリヲン新劇場版:Qより

 

冬月との将棋のシーン
ユイは 今はエヴァ初号機の制御システムとなっていることをシンジは知らない。

 

 

シンジに真実を知らせる意味は何か、それはユイの望みでもあるのか?

 

冬月
「エヴァの極初期制御システムだ。
ここでユイ君が発案したコアへのダイレクトエントリーを自らが被験者となり試みた。
君も見ていたよ 記憶が消去されているがな。
結果 ユイ君はここで消え 彼女の情報だけがアヤナミシリーズに残された。
君の知っている綾波レイは ユイ君の複製体の1つだ。
その娘も君の母親同様 初号機の中に保存されている。
全ては碇の計画だよ」

 

いいなりこんなことを言われても、シンジにとっては晴天の霹靂としか言いようがないが、一瞬消されていた記憶がよみがえる。

 

これにより レイが掃除している姿が母親に重なったり、レイがユイの複製体だということが なんとなく腑に落ちるところがあったのかもしれない。

 

冬月
「世界を崩すことは造作もない。
だが 造り直すとなるとそうもいかん。
時と同じく 世界に可逆性はないからな。
ヒトの心にも。
だから今 碇は自分の願いをかなえるために あらゆる犠牲を払っている。
自分の魂もだ。
君には少し 真実を伝えておきたかった。
父親のことも」

「まったく嫌な役だ ユイ君・・・これでいいんだな」

 

冬月は、真実をシンジに伝えることを嫌な役だと言っている。

 

この状況では真実をシンジに伝えるのは冬月しかいないのは確かだろう。ゲンドウが真実をシンジに伝えるというのは、あのゲンドウのキャラからしたらあり得ないし、もし伝える意思があるなら とっくに伝えていているだろう。

 

そしてカヲルは、ユイが取り込まれた実験の時にはいなかった。

 

冬月が
「まったく嫌な役だ」と思いながらもシンジに真実を伝えたのは

 

そこにユイの意思が働いているようにも見えるが、ユイはシンジが真実を知ったうえで ゲンドウの人類補完計画に強力してほしかったのか、それが夫婦としての願いであることを シンジに知ってほしかったのかは 今の段階では不明だ。

 

シンジは
「そうだ 綾波は助けたんだ それでいいじゃないか」
と思っていたが、そんなことはぶっ飛ぶくらいの真実だったってことになる。

 

シンジの中では何もまとまるはずもない。

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ひょとして 家族を再構築したいのか!?

 

TVシリーズの最終話では ゲンドウとユイ シンジが 平凡ながらも幸せに暮らしている姿が描かれている。

 

ひょっとしたら すごくシンプルに 家族の再構築に向かっているとも考えられる。

 

エヴァの物語は 様々な伏線があり いろいろな捉え方や考え方ができるが、この伏線をつなぎ合わせれば 家族の再構築も出来てしまう。

 

そのための人類補完計画という可能性もある。

 

ユイが事故により 初号機に取り込まれてしまったのは アクシデントであり予定していたことではなかった。

 

この事故により 平凡で幸せだった日々は ゲンドウにとってもユイのとっても 辛いだけの日々になってしまった。

 

ユイは初号機に取り込まれてしまっているが、ゲンドウもユイも 家族の幸せな日々を 夢見ているのかもしれない。

 

こんな見方をすれば、冬月がゲンドウのそばで協力しているのも 不思議ではない。

 

失って初めてわかる 平凡だけど幸せな日々。

 

生きていれば イヤなことや辛い事 うまくいかないことなどは日常茶判事にあり、通は日々生きている中で「幸せ」なんて感じることも少ないだろう。

 

だが、そんな何気ない日常の中にこそ「幸せ」がある。

 

好きなものを食べて おいしぃと感じて幸せな気分になったり、好きな人に おはよう!と挨拶されただけで幸せと感じたり「幸せ」とは本来、こういうことなのかもしれない。

 

そんな「幸せ」に気づくため、エヴァの中の登場人物たちは 辛い思いや しんどい思いをしているのかもしれない。


もしそうなら エヴァンゲリオンは直訳で「福音」だ。


「福音」とは「良い知らせ」日々の中にこそ「幸せ」があるという「良い知らせ」なのかもしれない。 

 

結局は 心が満たされない空白部分を 埋めようとしているだけではないか という見方もできるが、家族を想う「愛」とも捉えることが出来る。

 

満たされない部分を埋めるための「エゴ」と捉えるのか、家族を想う「愛」と捉えるかは、見る角度にって違ってくる。

信じた道の先に、花は咲く。 86歳女性科学者の日々幸せを実感する生き方

  

シンジが真実を知っても ますます混乱するだけでしかない

 

何もまとまらないままのシンジは、フラフラと綾波にあの時助けたことを確認しに行くが
「知らない」と言われてしまう。

 

そして
「助けてなかったんだ・・・綾波・・・」

 

ミサトの
「何もしないで 何もしないで」という言葉がよみがえる

父親の言葉
「エヴァに乗れ エヴァに乗れ」

サクラの言葉
「エヴァにだけは乗らんといてくださいよ・・・」

心の声
「母さん・・・」

ミサト
「何もしないで」

ゲンドウ
「エヴァに乗れ」

アスカ
「あんたには関係ない・・・」

レイ
「知らない」

繰り返しシンジの中でこの言葉たちがよみがえる

真実を知って 尚更自分が何をしているんだかわからない。
綾波を助けていなかったことにショックを受ける。

 

人に言われたことに素直に従い、シンジが自分自身で決めたことと言えば「綾波を助ける」ことだけだった。

 

今までのように、人に言われたように従おうとしても、みんなの言っていることはバラバラで、誰に従えばいいのかさえ分からない。

 

たとえ誰かに従ったとしても 自分の好きな人たちはまるで逆の事を言っているから 誰かに従えばだれかを裏切ることになる。

 

今までのシンジは 無意識の承認欲求から行動をしていたが、この状況下では今までのパターンさえ通用しない。シンジにできることは混乱することしかない。

 

そして真実を知ったからと言って 現状を理解することすらままならず 自分にとって何が一番いいかなんて全くわからない。

 

理解しようとしたところで この精神状態で理性的に理解するのは不可能に近い。

 

頭の中でみんなの声がグルグル回る。

 

心の許容量がいっぱいになって零れ落ち 心が壊れてもおかしくない状態だ。

 

いっそのこと壊れた方が楽になるのかもしれないが、シンジの心が壊れることはない。

 

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