大人の都合に 14歳のシンジは逆らえないよ

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第壱話「使徒、襲来」より

 

ネルフの中で道に迷った末 リツコに迎えにきてもらいゲンドウと3年ぶりの対面をする。
いきなりのエヴァ格納庫だ。そりゃシンジは驚く。

 

 

大人の思惑、シンジ心の葛藤

 

シンジ 
「顔・・・巨大ロボット・・・」
シンジは焦って極秘資料をみるけど

リツコ 
「探しても載ってないわよ」

シンジ 
「エッ・・・」

リツコ 
「人の造りだした究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン その初号機、建造は極秘裏に行われた。我々人類の最後の切り札よ」

シンジ 
「これも父の仕事ですか?」
このとき シンジの問いにゲンドウが答える。

ゲンドウ
「そうだ、久しぶりだな」

シンジ 
「父さん・・・」

このときシンジは一瞬ゲンドウを見るが すぐに目を逸らせてしまう。
それを見たゲンドウは フッと言って少し笑い すかさずに

ゲンドウ
「出撃」

ミサト 
「出撃?零号機は凍結中でしょ。まさかっ!初号機を使うつもりなの?」

リツコ 
「他に道はないわ」

ミサト 
「ちょぉとぉ、レイはまだ動かせないでしょう?パイロットがいないわよ」

リツコ 
「さっき届いたわ」

ミサト 
「マジなの?」

リツコ 
「碇シンジ君」

シンジ 
「はい」

リツコ 
「あなたが乗るのよ」

シンジ 
「へっ・・・」

ミサト 
「でも、綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ。今来たばかりのこの子にはとても無理よ」

リツコ 
「座っていればいいわ。それ以上望みません」

ミサト 
「しかし・・・」

リツコ 
「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには 誰でもエヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか方法はないの。分かっているはずよ。葛城一尉」

ミサト 
「そうね・・・」

それを聞いていたシンジは
シンジ 
「父さん、なぜ呼んだの?」

ゲンドウ
「お前の考えている通りだ」

シンジ 
「じゃあ、ボクがこれに乗って さっきのと戦えっての?」

ゲンドウ
「そうだ」

シンジ 
「ヤダよ!そんなの、何を今更なんだよ!父さんはボクがいらないんじゃなかったの?」

ゲンドウ
「必要だから呼んだまでだ」

シンジ 
「なぜ・・・ボクなの・・・」

ゲンドウ
「他の人間には無理だからなぁ」

シンジ 
「無理だよ、そんなの。見たことも聞いたこともないのにできるわけないよ!」

ゲンドウ
「説明を受けろ」

シンジ 
「そんな・・・できっこないよ、こんなの乗れるわけないよ!」

ゲンドウ
「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!」
(シンジはビクッとする。乗らなければまた捨てられると思ったんだろう)
この間も使徒の攻撃は留まることはない。

ゲンドウ
「ヤツめ!ここに気付いたか!」

リツコ 
「シンジ君、時間がないわ」

ミサト 
「乗りなさい」

シンジ 
「ヤダよ、せっかく来たのに・・こんなのないよ!」

ミサト 
「シンジ君、何のためにここに来たの?ダメよ逃げちゃ、お父さんから 何よりも自分から」

シンジ 
「分かってるよ!でも、出来るわけないよっ!」

 

シンジにしてみれば期待とあきらめの狭間で 今まで経験したことのない状況だ。頭で考えたところで何一つ納得出来ないだろうし、もちろんそこに心がついていけるはずもない。


ゲンドウに「そうだ、久しぶりだな」と言われ「父さん・・・」と答えるけど 、一瞬ゲンドウの顔を見るだけで すぐに目を逸らせてしまう。捨てられたと思っているシンジは きちんと目を合わせてゲンドウと対峙することが出来ない。


ミサトとリツコの会話では「ちょっとぉ、レイはまだ動かせないでしょう?パイロットがいないわよ」とミサトが言うのに対して、リツコは「さっき届いたわ」と答えている。リツコもシンジを道具としてみているふしがある。

 

そんな会話をシンジがどこまで理解出来ているかは不明だけど シンジとしては確認したくなる。ゲンドウに「父さん、なぜ呼んだの?」と聞くが、答えは想像通りで「お前の考えている通りだ」と言われてしまう。淡い期待は見事に打ち砕かれる。

 

淡い期待は打ち砕かれても やっぱりそうかとは 納得出来ない心は叫ぶように「何を今更なんだよ!父さんはボクがいらないんじゃなかったの?」と問いかける。その問いかけに「必要だから呼んだまでだ」と言われてしまう。

 

シンジにしてみれば 何を今更という気持ちと 必要とされている、というふたつの間で揺れ動く。何を今更と思い切れない気持ちと 心のどこかでは必要とされたい気持ちと、両方の気持ちがあるんだからから どうにもならない。

認めてもらいたい人達 心療内科医による仏教的心理学(療法)の展開

 

生きるための術は 心を封印する

 

相反するするふたつの気持ちが交錯する。心は頭で考えるようにどちらか一方になんて出来ない。しかも初めて見るエヴァになんか乗れるわけないと思ってるんだからなおさらだ。


そんなシンジの心の葛藤は 大人たちの思惑によって無視される。「ヤツめ!ここに気付いたか!」「シンジ君、時間がないわ」「乗りなさい」と立て続けに言われてしまう。頭も心も納得出来るはずがない。

 

でも人の心理は上手くできている。心を感じ続けて辛くて耐えられなくなると 心を封印することも出来る。思考でいろいろ考えて納得出来たような答えを導き出して 心が感じたことをなかったことにしたりする。封印された心はそのときの感情そのままに そこに留まり続けることになる。

 

それは心理療法でいうインナーチャイルドが近い。
大人の自分が意識に上げて そのエネルギーと一体化しない限り癒されることはない。

 

もし自分の人生が生きづらいとか なぜそうなってしまうのか分からないけど、いつも同じことをくり返しているようなら 心のどこかに封印されたエネルギーがあるのかもしれない。

心の仕組み 上 (ちくま学芸文庫)

 

ケガをしているレイを見たシンジはエヴァに乗る覚悟をする

 

ゲンドウ
「冬月、レイを起こしてくれ」

冬月  
「使えるかね?」

ゲンドウ
「死んでいるわけではない」

冬月  
「分かった」

ゲンドウ
「レイ」

レイ  
「はい」

ゲンドウ
「予備が使えなくなった、もう一度だ」

レイ  
「はい」

リツコ 
「初号機のシステムをレイに書き直して!再起動」

オペレーター
「了解、現作業を中断、再起動に入ります」

シンジは下を向いたまま「やっぱりボクはいらない人間なんだ」とつぶやく。このときまた 小さいときの捨てられた自分を見る。そこに ベッドに寝たままのレイが来る。

 

レイがベッドから起き上がろうとしたときに 使徒の攻撃で格納庫が揺れる。シンジの上に鉄板が落ちそうになったとき 初号機がシンジを守るんだが、それを見ていたゲンドウは笑っているようにも見える。

 

リツコ 
「まさか!ありえないわ、エントリープラグも挿入していなにのに!動くはずないわ!」

ミサト 
「インターフェースもなしに反応している、というより守ったの?彼を!・・行ける!」

シンジはレイに駆け寄り助け起こそうとするけど 苦しそうなレイは出血している。自分の手についた血を見ながら、有名なセリフ
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」
シンジ 「やります、ボクが乗ります」

 

次回 第弐話「見知らぬ、天井」 
エヴァは使徒に勝つ。だがそれは全ての始まりに過ぎなかった。父親から逃げるシンジ、ミサトの傲慢は自分が彼を救おうと決心させる。(第参話の予告ナレーションシン)

 

エヴァンゲリヲン新劇場版:序より 

心。