プライドさえも捨てざる得なくなったアスカの心情

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第九話「瞬間、心、重ねて」より

 
使徒イスラフェルを倒すための作戦が始まり、アスカもミサトの家に住むことになる。

 

 

今までの自分のやり方では通用しなくなってしまったアスカの心のうち

 

ミサト
「第七使徒の弱点はひとつ、分離中のコアに対する 二点同時の加重攻撃、これしかないわ。つまり エヴァ二体のタイミングを完璧に合わせた攻撃よ。そのためには二人の協調、完璧なユニゾンが必要なの。そこで、あなたたちにこれから一緒に暮らしてもらうわ」

アスカ
「えーーー」

シンジ
「えーーー」

アスカ
「いやよ!昔から男女七歳にして同衾せずってね!」

ミサト
「使徒は原罪 自己修復中、第2波は6日後、時間がないの」

アスカ
「そんな、無茶な」

ミサト
「そこで、無茶を可能にする方法、二人の完璧なユニゾンをマスターするため、この曲に合わせた攻撃パターンを覚えこむのよ。6日以内に、1秒でも早く」

 

さっそくユニゾンの練習が始まるが

委員長
「それで、ユニゾンはうまくいってるんですか」

ミサト
「それが、見ての通りなのよ」

アスカ
「あったり前じゃない!このシンジに合わせてレベル下げるなんて うまくいくわけないわ!土台無理な話なのよ」

ミサト
「じゃあ、やめとく?」

アスカ
「他に人、いないんでしょ」

ミサト
「レイ」

レイ
「はい」

ミサト
「やってみて」

レイ
「ハイ」

レイとシンジのユニゾンは見事に合っている。

ミサト
「これは、作戦変更して レイと組んだ方がいいかもね」

アスカ
「えっ、あっ・・・・・もうー、ヤッ!やってらんないわっ」

アスカは家を飛び出してしまう。
委員長に言われ シンジはアスカを追いかける。

シンジは コンビニにいるアスカのところへ行くが

アスカ
「何も言わないで!」

アスカ
「わかってるわ、私はエヴァに乗るしかないのよ」

思い切ったように立ち上がり

アスカ
「やるわ、わたし こうなったら何としてもレイやミサトを見返してやるのよ」

シンジ
「そんな、見返すだなんて」

アスカ
「なーに甘い事いってんのよ!男のくせにっ、傷つけられたプライドは10倍にして返してやるのよ」

 

決戦前夜 寝ぼけたアスカはシンジの布団で寝てしまう。
シンジがドキドキしながらもキスしようとすると 
アスカは「ママ、ママ・・・」と寝言を言いながら涙を流す。

シンジ
「自分だって 子供のくせに」
布団をかぶってひとり呟く。

決戦当日 見事使徒イスラフェル殲滅
その後二人の言い争いが始まり 冬月がゲンナリして「また 恥をかかせおって」で終わる。

 

次回マグマダイバー
羽化直前の使徒が眠る浅間山火口、ネルフは 初の捕獲を試みる。極地使用のエヴァ弐号機が 灼熱の地獄へ挑む。(第拾話の予告ナレーション)

 

今まで 自分のペースでうまくやってきたアスカにとって、自分のペースが通用せず 他人、しかも自分が認めていないシンジに合わせてやらなければならないことは 屈辱にさえ感じるのかもしれない。

 

そんなアスカに ミサトから「これは、作戦変更して レイと組んだ方がいいかもね」と言われれば 自分の役割を レイに明け渡すことになってしまう。そんなことになれば 自分の居場所がなくなってしまうと感じただろうし、それは恐怖につながる。

 

ミサトたちが アスカが出来なかったからと言って アスカを用なしと思うことはないだろうが、アスカ自身が 出来なければ自分は用なしと思ってしまえば 認めてもらうために なんとか出来るようにしなくてはならい。

プライドの心理分析: 心理分析法中級シリーズ第7巻

 

存在意義をなくすことの恐怖が プライドをも捨てる

 

アスカにとっては 自分自身の努力でやってきた自負があるから 当然プライドもある。プライドが高いということは、裏を返せばそれだけ承認欲求が強いということになる。

 

プライド自体は 多かれ少なかれ誰にでもあるものだと思うが、ポジティブに見れば自信があるということで、自分は大丈夫だと思えることは 人の強さにもつながり大切なものになる。

 

逆に ネガティブにとらえれば 自身を守る防衛本能ということになる。本当は自信がないから 頑張って周りに認めてもらおうとする。これは 自分自身で認識できていないと 無理をしてでも頑張ることになる。

 

アスカの場合 幼少期のトラウマが起因する。両親の不仲、それにより母親は精神を病んで自殺してしまう。しかもその現場を 子どものアスカは目撃してしまった。小さい子どもにとって その衝撃はどれくらいのものなのか 心の傷は計り知れない。

 

子どものころに 親に認めてもらえなかったのは言うまでもないが、母親自身が心を病んでしまっているのだから アスカにとっては どうすることも出来ない。母親に求めてもらおうにも まともなコミュニケーションさえ取れない。

 

子どものアスカは 頑張っていい子にして 良い成績をとれば 認めてもらえるかもしれないと けなげに頑張ったのではないかと思われる。ママに認めてもらおうと頑張っているのに 母親の自殺現場を見てしまったのだから そのトラウマは根深い。

 

母親の病により 認められた経験もなく、それにより安心できる場所もなかったアスカにとって、エヴァに乗り成果を上げることで 初めて自分自身の居場所があると思えるのは 生育環境を考えれば当然の成り行きかもしれない。

 

そして「ママ、ママ・・・」と寝言を言いながら涙を流すアスカは、エヴァに乗り認められることで 母親にも認めて欲しいと 心の奥底では 今も切実に願っているのだろう。

 

その居場所がなくなってしまうことは 自分が全否定されるように感じるかもしれないし、母親の死を目撃した当時に 逆戻りするような感覚もあるかもしれない。

 

そんなことになれば 今までの努力が水の泡だし、またそこから頑張って這い上がるほどの精神力が残されているかどうかも分からない。ならば プライドを捨ててもエヴァに乗ることを選択するのは アスカ自身 生き残りをかけた自分自身との戦いなのかもしれない。

トラウマのことがわかる本 生きづらさを軽くするためにできること (健康ライブラリーイラスト版)