借りを返すためなら危険なこともいとわないのはなぜ

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第拾壱話「静止した闇の中で」より

 

その日、第3新東京市は突然の停電に見舞われた。
都市機能が停止し、ネルフ本部は機能不全に陥る。


そして、その状況を見透かしたように第9の使徒マトリエルが出現。
異変に気付いたシンジ達は本部へと向かうが。万能であるはずの科学に守られたネルフの施設が行くてを阻む。

 

 

ここぞとばかりに張り切るアスカ


光を失った本部内では碇指令が自らの手で、EVAの発進の準備を進めていた。

 

ネルフ本部に向かう途中、アスカはここでも
「もう! 私がリーダーなんだから、黙って付いてくればいいのよ!」と息巻く。

 

レイに対しても「あんた、ちょっと贔屓にされてるからって、なめないでよ!」と対抗意識バチバチだ。

 

ミサトもエレベーターに閉じ込められているし、使徒殲滅時もアスカが仕切る。


レイ
「目標は、強力な溶解液で本部に直接侵入を図るつもりね」

シンジ
「どうすんの?」

アスカ
「決まってるじゃない、やっつけるのよ!」

シンジ
「だからどうやってだよ!ライフルは落としちゃったし、背中の電池は切れちゃったし、後3分も動かないよ!」

アスカ
「…作戦はあるわ」

アスカ
「ここにとどまる機体がディフェンス。A.T.フィールドを中和しつつ奴の溶解液からオフェンスを守る」

アスカ
「バックアップは下降。落ちたライフルを回収しオフェンスに渡す。そしてオフェンスはライフルの一斉射にて目標を破壊。これでいいわね?」

レイ
「いいわ。ディフェンスは私が」

アスカ
「おあいにくさま。あたしがやるわ」

シンジ
「そんな、危ないよ」

アスカ
「だからなのよ。あんたにこの前の借りを返しとかないと、気持ち悪いからね」

アスカ
「シンジがオフェンス、優等生がバックアップ、いいわね?」

レイ
「分かったわ」

シンジ
「………うん!」

アスカ
「じゃ、行くわよ!Gehen!」

シンジ
「綾波!」

シンジ
「アスカ、よけて!」

アスカ
「これで借りは返したわよ!」

シンジ
「うん!」


次回 奇跡の価値は
使徒殲滅に己の業をぶつけるミサト、語られる過去。
だが成層圏より飛来する最大の使徒は 人々に希望を失せさせた。
(第拾壱話の予告ナレーション)

 


やはり アスカにとっては誰よりも出来ることが大事だ。リーダーになりたいのもそのひとつだが、そんなアスカを シンジは文句を言いながらも受け止めている。


レイも 何を言われても黙っていることが多い。そこに否定も肯定もないところが 渚カヲルの匂いと似ている。

「認められたい」の正体 承認不安の時代 (講談社現代新書)

 

借りがあるのはイヤ!アスカの心の内は?

 

借りを作るのはイヤだと思う人は多いだろうが、アスカは危険なこともいとわないくらい徹底している。特に エヴァのパイロットであるシンジやレイに借りがあるのは どうにも許せないという思いが強い。

 

普通に生活しているだけなら 誰にも借りを作らないことも出来るだろうが、エヴァで使徒殲滅をするうえでは 協力し合うのは不可欠で そこに貸したり借りたりはないと思うが、アスカにとっては違うようだ。

 

借りを作りたくないのは 弱みを見られたくないという思いがあるからだろうが、アスカにとってその弱みは 出来ない自分に繋がってしまうから「あんたにこの前の借りを返しとかないと、気持ち悪いからね」となる。

 

出来ない自分がダメだと思っているアスカにとっては 借りがあるのはとてもマイナスなことになるから なんとかそのマイナスを取り返すために 借りを返すことになる。だから危険なこともいとわない。

 

出来ない自分はダメ、出来て当たり前、できなければ認めてもらえない。アスカが借りを作ることは、その先の承認欲求が満たされないという思いにに繋がってくる。

 

アスカだけではなく シンジも自分の居場所を求めているし、レイでさえ「繋がっているだけ」という言い方をしている。
人は誰かに認められることで”ここにいていいんだ”と 安心感を得ることができる。

 

何かが出来なくても ありのままを認められればいいんだけど、自己肯定感が低いと自分で自分を認められないから 他者に認めてもらおうとアスカのように頑張ることになる。

 

そして自己肯定感を上げようとして 自分自身をほめてみたところで 言葉でいくらほめてみても 心が納得しなければ肯定感は上がらない。

 

アスカやシンジたちと 環境が違っても、人は無意識のうちに何かを求めて 安心できる居場所を探しているのかもしれない。

“自己肯定感”のスイッチが入る!自分を受け入れる力