レイの淡々とした態度が理解出来ないシンジ、怖くても逃げることも出来ないココロのジレンマ

 

エヴァンゲリヲン新劇場版:序より

 

ベッドの上でハッとして目を覚ましたシンジは そこにレイがいることに驚く

レイはそんなシンジにはおかまいなしに,伝えることだけを伝える

 

 

レイとの会話はまったく交わることなく、シンジをさらに不安にさせる

 

レイ  
「明日午前0時より発動される ヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。碇、綾波両パイロットは本日19:30第2ターミナルに集合。20;00初号機および零号機に付随し移動開始。20:05発信。同30双子山第2要塞に到着。以降は別命あるまで待機。明日 日付変更とともに作戦行動を開始。食事」

シンジ 
「何も・・・食べたくない」

レイ  
「90分後に出発よ」

シンジ 
「またあれに乗れっていうのか」

レイ  
「そうよ」

シンジ 
「もうヤだ。もうあんな怖い思いしたくない。怖くて怖くて・・・でも逃げることも出来ないんだ」

レイ  
「エヴァが怖いの? じゃ寝てたら」

シンジ 
「寝てたらって・・・」

レイ  
「初号機にはあたしが乗る」

シンジ 
「アヤナミ!!!」

レイ  
「さよなら」

そのあとシンジはひとり黄昏てしまう

 

レイらしいね。連絡事項のスケジュールを淡々と伝える

そりゃシンジの気持ちなんか分かるはずないんだから、当然といえば当然だけど

 

シンジが

「何も食べたくない」

と言ってもお構いなしに

「90分後に出発よ」と答える

言われたシンジは

「またあれに乗れっていうのか」

って言うんだけど、いとも簡単に

「そうよ」と返されてしまう

 

もうあんな怖い思いをしたくないシンジは

「もうヤだ。もうあんな怖い思いしたくない。怖くて怖くて・・でも逃げることも出来ないんだ」

って言うけど、言ってみたものの,レイはシンジの気持ちに答えることなく

「エヴァが怖いの? じゃ寝てたら」

とこんな返事が返ってくる


シンジにとっては理解不能だろう

シンジがレイの立場だったら絶対にそんなこと言わないだろうから

 

しかもシンジが唖然としていれば、間髪入れずに

「初号機にはあたしが乗る」って言われてしまう

 

シンジにしたら へっ・・・?って感じだろう

「アヤナミ!!!」ってしか言えないだろう

しかもレイは

「さよなら」と言ってさっさと行ってしまうんだから

 

感覚の違いは、かみ合うところがまるでない

レイは感情が分からないってのもあるけど、それにしてもシンジの心情はまるで無視だ

 

淡々とスケジュールを伝えて

「エヴァが怖いの? じゃ寝てたら」って言えちゃう

シンジに対して強制することもない

 

この辺はゲンドウに似ている

シンジにとっても、レイの受け答えには唖然とするしかない

シンジにはレイの感覚は分かるはずもないだろう

 

感情を感じるシンジにとっては、感情が分からないってこと自体、どういうことなのか理解出来ない。会話は成り立っているのに、何かがずれている感じがして、シンジにとっては へっ・・・?ってなってしまう

 

無視されたようにも感じるだろう。レイは全くわれ関せずだけど

シンジの心情が分からないんだから仕方ない

ふたりの感覚は交わるところがない

 

怖れを手放す アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ

 

会話が成立しているように見えても、個々の感覚はそれぞれに違い、そこにズレがあることには気づきにくい

 

レイとシンジの会話は分かりやすいけど、こっれって現実レベルでもあることだ

人はみんな自分の感覚が普通だと思っいるふしがあるから

 

現実レベルで会話が成り立っていて、分かり合えているようにみえても、実際はお互いがお互いの感覚で分かっていると思っているだけで、それが会話の相手と同じ感覚とは限らない

 

お互いにずれたままで、分かり合ってると思っていることがたくさんある

 

例えばだけど 「フラバっちゃた」って言葉


フラバとはフラッシュバックのこと。元カレと分かれた原因が、元カレの浮気だったとする。浮気がバレた原因は、彼の車に乗ったときに自分の知らない口紅が落ちていた

 

その口紅から浮気が発覚。彼のことは好きだったけど、どうしても浮気が許せなくて別れたとしよう

別れたけれど彼のことは大好きだったから、何日も泣いてやっと最近落ち着きを取り戻しつつある


そんなとき、たまたまつけていたテレビで、彼の車にあったのと同じ口紅のCMを見てしまった

 

同じ口紅を見たとたん また思い出してイヤな思いをして気分が悪くなった

そして、なんであたしばっかりこんな思いしなくちゃいけないの!と思ったりする

 

そして友達に「テレビで同じ口紅見てフラバっちゃたよ」と話したりする

 

これっていかにもフラッシュバックに見えるかもしれないけど、厳密に言えばフラバとはいいがたい

 

テレビで、同じ口紅見てムカついて気分が悪くなっただ

本当のフラッシュバックはこんなもんじゃない


例えば、小さいときから何かにつけて父親からぶたれていたら 男の人が手を振り上げたのを見ただけで、恐怖が蘇り体は硬直して1ミリたりとも動けなくなるかもしれない

 

子どもの頃に父親にぶたれたときの恐怖そのままに体が反応する

こうなるとイヤなことを思い出したとか、気分が悪くなったとかのレベルじゃないんだ

 

体が自動反応して、自分でどうにかしようと思ってもどうにもならない

制御不能状態になる

 

このふたりがフラバちゃった話をしても、全く別次元の話になってしまう

口紅の子と父親にぶたれていた子が、ふたりで「フラバっちゃった」会話をしたら、口紅の子は「え~。あたしもだよぉ」って感じで、相手に対して自分のフラバと同じだと思って会話をするだろう

 

だって本当のフラッシュバックなんて知らないんだから分かるはずがない

父親にぶたれていた子は「えっ、そうなの・・・? 同じなの・・・?」となぜか理解は出来なくても違和感を覚える

だってこの子にとってのフラッシュバックは、そんなに簡単なものじゃないんだから

 

こんな風に現実レベルで会話が成立しているように見えても、実はまったくかみ合ってないことがよくある

 

人は自分が体験したことでないと分からないから。何がいいとか何が悪いとかの話ではない

 

体験が違うということは、話が合ってるように見えても、実際には全然違う感覚で受けとっていることがよくあるってことになる

レイとシンジのようにね

 

分からないレイの方は悪気があるわけじゃないけど、シンジは唖然としてしまうし無視されたようにも感じてしまう

 

えてして体験していないから分からない人は仕方ないんだけど、体験していて感情が分かっている人は、心で感じてしまう分、体験していない人には想像もつかないほど傷付くことが圧倒的に多い

 

感情というのはもちろん感覚のことで、心で瞬時に感じる感情のこと

思考で考えを巡らせて、感じていると思うこととは根本的に違う

 

<わたし> ―真実と主観性(覚醒ブックス)