シンジに対して手を差し伸べずにはいられなかったミサトの心情

 

エヴァンゲリヲン新劇場版:序より

 
わけもわからないまま使徒を倒したシンジ

まあ 実際は気を失っている間に エヴァが暴走したんだけど

シンジはネルフに部屋を用意されるんだけど それを聞いたミサトは驚く

父親のゲンドウがいるわけだから,普通は親子一緒に住むと思ったんだろう

 

 

父親が苦手だった自分とシンジが重なり合った

 

ミサト   
「ひとりで!ですか?」

ネルフ関係者
「彼の個室は この先の第6ブロックになる。問題なかろう」

ミサト   
「それでいいの?シンジ君」

シンジ   
「いいんです。ひとりのほうが・・どこでも同じですから」
それを聞いてミサトは動いちゃうんだな

リツコ  
「なんですって!」

ミサト   
「だからぁ、あたしんところで引き取ることにしたから。上の許可もとったし、心配しなくても子どもに手ぇ出したりしないわよぉ」

リツコ   
「あったりまえでしょう!何言ってるのよ!あなたって人はいつも・・・」

ミサト   
「相変わらずジョークの通じないヤツ」
で シンジと一緒に帰る途中

ミサト   
「さぁてとっ、今夜はぱーっとやらなきゃねぇ」

シンジ   
「なにをですか?」

ミサト   
「もちろん!新たなる同居人の歓迎会よ」
コンビニで買い物をしたあと

ミサト   
「すまないけど ちょっち寄り道するわよ」

シンジ   
「どこへですか?」

ミサト   
「うふん、い・い・と・こ・ろ・」
そして 街が見える高台へ

シンジ   
「なんだか寂しい街ですね」

ミサト   
「時間だわ」

シンジ   
「すごい!ビルがはえてくる!」

ミサト   
「これが使途専用迎撃要塞都市、第3新東京市、私たちの街よ。そして あなたが守った街」
ミサトはシンジが守った街を見せたかったんだ

家に帰って 食べ物を冷蔵庫に入れといて、と言われたシンジは冷蔵庫の中身に驚

氷、つまみ、ビールしかないけどね

14歳のシンジにとっては ミサトの生活はナゾにだろう

買ってきたものをレンジでチンして
 
ミサト   
「いっただきま~す」

シンジ   
「いただきます」

ミサト   
「ははぁ~くぅ~、やっぱ人生このときのために生きているようなもんよねぇ。えっ、食べないの?結構いけるわよ。インスタントだけど」

シンジ   
「いや・・あの・・こういう食事慣れてないので」

ミサト  
「だめよ!好き嫌いしちゃぁ」

シンジ   
「いえ、違うんです。あっ、あのう・・・」

ミサト   
「楽しいでしょ、こうして他の人と食事するの」

シンジ   
「はい」

ミサト   
「今日からここはあなたの家なんだから、な~んにも遠慮なんていらないのよ」

シンジ   
「は、はい」

ミサト   
「もう、はいはいはいはいって、辛気臭いわねぇ、おっとこのこでしょ、しゃきっとしなさい、しゃきっと」

シンジ   
「はい」

ミサト   
「まあ いいわ、やなことはお風呂に入ってぱ~っと洗い流しちゃいなさい。風呂は命の洗濯よ」
お風呂に入ろうとしたシンジは ぺんぺんに遭遇

シンジ   
「ミ、ミサとさん!」

ミサト   
「なによ」

シンジ   
「あ~あ~あ~」
ぺんぺんは平然としてるわな

ミサト   
「あーかれ、温泉ペンギンという鳥の仲間よ。」

シンジ   
「あんな鳥がいるんですか?」

ミサト   
「15年前はね、いっぱいいたのよ、名前はぺんぺん、縁あって家にいるもうひとりの同居人。それより前、隠したら」
14歳の男の子にしたらキツイかも

ミサト   
「ちと わざとらしくはしゃぎすぎたかしら。見透かされてるのはこっちかもね」
そして寝る前に ミサトはシンジに声をかける

ミサト   
「シンジ君、開けるわよ。ひとつ言い忘れていたけど あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。おやすみ、シンジ君 頑張ってね」

ミサトはシンジのことを自分と重ねたのかもしれない

ミサトも父親が苦手だったから シンジのことを人事とは思えなかったのかもね

だからシンジがひとりで住むと聞いたとき、だったら自分が引き取ろうと思ったんだろう 

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他人の為とは、ただの自己満足だったり、傲慢にさえなることがある

 

シンジの心を少しでも軽くしようと 第3新東京市を見せる


人のために、誰かのために、役にたってると実感できることは、自分自身を認めるのに手っ取り早い方法だ

しかも誰かのためってのは、愛があるように感じるし、徳をつむようにも感じられる

愛があり徳をつめば、人間的に成長したように思えるだろうし、使命だと感じる人もいるだろう

 

でもこれって実は危うかったりする

人のために何かしたとしても、自分自身を誤魔化していたら自分の心は満足出来ないままだ。心で感じることは感覚であり感情だ

人のために何かをしたい、と思うのは思考ってことだ


一番の理想は、自分が心からやりたいことをやって、それが結果的に人の役にたつのが一番いいんだと思う

頭で考えて、あなたのためになるから私はやってあげてるのっていうのは、はっきり言って余計なお世話だと思うし

人によってはものすごい押し付けに感じて傲慢だとさえ思うかもしれない


人のためってのは 裏を返せば、その人がひとりで出来ないから私が助けてあげる、ってことだ

はっきり言ってしまえば

その人が自分ひとりの力では問題を解決できない、と思ってることになる

 

「人の為」と書いて「偽」

「いつわり」と読む

 

例えば 親が子どもによく言う言葉(全ての親がそうだと言ってるわけじゃない)

「勉強しなさい、あなたのために言ってるのよ」子どものころ 親に言われたって人は多いと思う

親心といえばそれまでだけど、勉強しないで困るのは子どもだ

 

だったら「勉強しなさい、あなたのために言ってるのよ」と言われるより

勉強が出来ないと何が困るのか、具体的に説明してくれる方がいい

 

子どもが理解できるように話して聞かせれば 勉強するもしないも子ども自身が決めればいいことだ

まあどのみち勉強が出来るのと、本当に頭がいい、ってのはまた別の話だと思うけど

 

ミサトはシンジに自分自身を投影してるから 何とかしたかったんだろう

妙なテンションで盛り上げようとしてるよね

でもミサトはそんな自分自身に気付いてる


「ちと わざとらしくはしゃぎすぎたかしら。見透かされてるのはこっちかもね」


自分のことに気付いてないと この言葉は出てこない

それでもシンジに声をかけずにはいられなかったんだ


「シンジ君、開けるわよ。ひとつ言い忘れていたけど あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。おやすみ、シンジ君 頑張ってね」

 

人はみんな 自分自身のイヤなところは見たくない

見たくないというより見ない

ってのが本当かも

だからやっきになってポジティブシンキングとか流行る

 

ネガティブはよくない、ポジティブがいい、みたいにね

でもそれって思考で、心や感覚ではない

心や感覚はいいとか悪いとかジャッジなんかしない

 

思わず チッ!って舌打ちするようなことがあったとき

ネガティブだから舌打ちなんかしちゃだめ、なんて思わないし

そんなこと考える前に、チッ!って言ってるでしょ

これは思考じゃないってこと

 

でも思考だと チッ!ってなっても 

今のはよくないからもっとポジティブにならなきゃ、とか考えるんだろうな

そうやって心や感覚を無視し続けると

いつも頭で考える思考ばかりになって、感覚が鈍くなったり封印されていくんだ

感覚に蓋をしてなかったことにするんだ


人の心はうまく出来てる

 

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