シンジを救おうとするミサトは傲慢!?

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第弐話「見知らぬ、天井」より

 

エヴァに初めて乗って 歩くことさえままならないんだから、そりゃあ使徒にはちょちょいとやられてしまう。気がついて目が覚めればベッドの上で 見えた天井は知らない天井だ。

 

病院の通路に座っていると 横をベッドに寝たまま移動するレイがいる。ミサトが迎えに来てエレベータに乗ろうとするが 扉が開いた先にはゲンドウがいる。シンジとゲンドウはお互いを見るけど シンジから先に視線を外す。ふたりとも無言のまま エレベーターの扉は再び閉まる。ミサトも無言だ。

 

 

それは傲慢?

 

リツコ 
「よろしいのですね、同居ではなくて」

冬月  
「碇たちにとっては お互いにいない生活が当たり前なのだよ」

リツコ 
「むしろ一緒にいる方が不自然・・ですか」

その後ミサトは シンジがひとりで生活すると聞いて驚く。
ミサト 
「ひとりでですか?」

ネルフスタッフ
「そうだ、彼の個室はこの先の第6ブロックにな。問題はなかろう」

シンジ 
「はい」

ミサト 
「それでいいの?シンジ君」

シンジ 
「いいんです、ひとりの方が。どこでも同じですから」
それを聞いたミサトは シンジと一緒に生活することにする。

帰り道
ミサト 
「すまないけどぉ、ちょっち寄り道するわよ」

シンジ 
「どこへですか?」

ミサト 
「うふん、い・い・と・こ・ろ」
ミサトはシンジが守った街を見せたかったんだ。

シンジ 
「なんだか寂しい街ですね」

ミサト 
「時間だわ」
サイレンとともに第3新東京市が浮かび上がる。

シンジ 
「スゴイ!ビルがはえてくる」

ミサト 
「これが使徒迎撃戦用要塞都市、第3新東京市。私たちの街よ、そしてあなたが守った街」

ミサトの家で
ミサト 
「シンジ君の荷物はもう届いてると思うわ。実は、あたしも先日この街に引っ越してきたばっかりでね。さっ入って」

シンジ 
「あの・・・お邪魔します」

ミサト 
「シンジ君、ここはあなたの家なのよ」

シンジ 
「た・・ただいま」

ミサト 
「おかえりなさい

部屋に入り
ミサト 
「まあ ちょ~っち散らかってるけど 気にしないでね」

シンジ 
「これが・・・ちょっち・・」

 

ミサとはシンジの心を解きほぐそうと楽しそうに振舞う。でもその後で ちとわざとらしくはしゃぎすぎたかしら「見透かされてるのはこっちかもね」とつぶやく。

 

ミサトはお風呂でリツコと電話する。
ミサト 
「そう、あんな目にあってんのよ。また乗ってくれるかどうか・・・」

リツコ 
「彼のメンテナンスもあなたの仕事でしょ」

ミサト 
「怖いのよ、どう触れたらいいのか分からなくって」

リツコ 
「もう泣き言?自分から引き取るって大見得きったんじゃない」

ミサト 
「うるさい!」

 

リツコと電話を切ったあとミサトは
「あの時、私はシンジ君を自分の道具としてみていた。リツコと同じか・・あの使徒を倒したというのに嬉しくないのね」とつぶやく。

 

シンジは寝室で知らない天井を見ながら
「当たりまえかぁ、この街で知ってるとこなんてどこにもないもんな」と思いながら、ミサトに ここはあなたの家なのよ、言われたことを思い出し 自分がなぜここにいるのかなんでここにいるんだろう・・・と心の声がつぶやく。使徒との戦いで見た光景を断片的にイメージで見る。

 

ミサトは風呂上りにシンジに声をかけるが シンジは背をむけたまま返事もせず微動だにしない。
ミサト 
「ひとつ言い忘れてたけど あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ。おやすみ、シンジ君 頑張ってね」
その言葉にもシンジは反応することがない。

 

わけもわからないまま 使徒を倒したシンジ。
まあ 実際は気を失っている間に エヴァが暴走したんだけど。

 

シンジはネルフに部屋を用意されているけど、お父さんと一緒に住まないと聞いたミサトは驚き、ミサトは 自分がシンジを引き取ると言い出す。


ミサト自身も父親との問題を抱えていたから シンジのことを人事とは思えなかったのかもしれない。ミサト自身が父親と向き合うことが出来ないまま 父親は亡くなってしまったし、その父親に命を助けられている。シンジに自分自身を投影して救いたい、という気持ちがあったとしてもおかしくない。

 

ただ ここで思うことは・・・? 人は 人を救えるのか?
これって 傲慢?  エゴ?

 

このミサトの心情は 前回第壱話最後の予告ナレーションで
エヴァは使徒に勝つ。だがそれは全ての始まりに過ぎなかった。父親から逃げるシンジ、ミサトの傲慢は自分が彼を救おうと決心させる、と言っている。

 

<彼のために> <誰かのために>これ かなりいい響きに聞こえるけど 本当にそう?
自分も救えないのに なぜ他人を救えるの?それともミサトは 自分自身を救えてるってこと?

生きやすさを手に入れるための 波動とエゴの法則を書いた本【縦書き】

 

誰かのために・・・これって本当は 自分のためなんじゃないの? 


 
分かりやすい例でたとえてみる。

たとえば 親がコドモによく言うこと、「あなたのために 言ってるのよ。」 本当に コドモのため?


これって本当にコドモのため?コドモの立場になってみれば 本当にボクのために言ってるの?ってなるんじゃないの?ボクはイヤだと思ってるのになんでボクのためになるの?ボクのイヤだと思ってる感情はどこへ行けばいいの?ってね。

 

でもママの言うことを聞かないと ボクはママに嫌われちゃうんだ。だから・・・ボクのイヤだと思っている気持ちは 箱に入れてしまったほうがいいんだ。ココロの奥の 深いところにしまうんだ。


深いところにしまって 無かったことにすれば ダイジョウブだよね。
だって そうしないと ママにきらわれちゃうから・・・

   
ってえことに なるんじゃないの?
まぁ心理療法でいうところの インナーチャイルドの出来上がり!
これって 親のエゴでないの?

 

もっと分かりやすく言えば
親に「勉強しないと立派な大人になれないのよ」なんて言われれば、コドモにとっちゃ勉強しなければ立派な大人になれない、と思うようになるし、言われ続ければなおさらのこと 勉強しない自分はダメな人、ということがインプットがされるだけだ。

 

自分のコドモが勉強できる人になってほしい親のエゴだ。わかっている親ならそんなこと言う代わりに コドモが勉強したくなるようにモチベーションあげること考える。

 

ミサトも言葉で シンジ君のためよー、って言ってるわけじゃないけど結局は同じではないか。でも ここから先がミサトのいいところ。
リツコとの電話で「彼のメンテナンスもあなたの仕事でしょ」と言われ「怖いのよ、どう触れたらいいのか分からなくって」と答えている。

 

ミサトは知っているんだ。不用意な言葉はシンジを傷付けるだけだってね。それにしてもリツコもすごい。「彼のメンテナンスもあなたの仕事でしょ」と言っている。人の心に関することなのにメンテナンスって言うかね。それとも科学者ならではの言葉なのか。まあリツコらしいっていえばリツコらしいけど。

 

リツコと電話を切ったあとミサトは
「あの時、私はシンジ君を自分の道具としてみていた。リツコと同じか・・あの使徒を倒したというのに嬉しくないのね」とつぶやく。
ミサトは自分の心の動きを誤魔化さないで正直に受け入れている。

 

シンジの部屋のふすまを開けて「シンジ君 あなたは立派だったわ。」と声をかける。が、シンジに寝たふりをされてしまう。


ミサトはシンジを道具としてみていたことを自分自身で認めている。
そこでポロッと「見透かされてるのは こっちかもね。」とつぶやく。
これ 自分自身に気付くってこと!凄くない?ここ なかなか気付けない。

 

自分自身の ネガティブな部分って 見たくない。
だいたいエゴや傲慢だと認識する前に “人のために”と称して“ワタシはいい人 ボクはいい人”って図式が出来上がる。

 

本当は ネガティブな部分も全部含めて自分自身なのに。みんな 見たくないから見ない。というより 見たくないから 無かったことにしてるのかもしれない。

 

無かったことにすると“無い”わけだから 自分はポジティブでいい人ってことになる。
いい人になりたい人が 多いってことだろうけど、ミサトのように 自分自身に気付ける人は少ない。

エゴ・トンネル――心の科学と「わたし」という謎