リツコから語られるミサトも知らなかったMAGIの秘密

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第拾参話「使徒侵入」より

 

エヴァ3体 直接肉体からハーモニクスを行うテスト中 第11使徒「イロウル」の出現でテストは中止。

「イロウル」は「恐怖」を司る天使
「神の畏怖」という意味をもち、恐怖をコントロールする力を持つとされる。

 

 

珍しくミサトの対して饒舌になるリツコ

 

MAGIは 疑似エントリーの防壁を仕掛けるが 次々に突破されてしまう。 

リツコ
「彼らはマイクロマシン、細菌サイズの使徒と考えられます」

リツコ
「その個体が集まって群れを作り、この短時間で知能回路の形成にいたるまで、爆発的な進化を遂げています」

冬月
「進化か」

リツコ
「はい。彼らは常に自分自身を変化させ、いかなる状況にも対処するシステムを模索しています」

冬月
「まさに、生物の生きるためのシステムそのものだな

ミサト
「自己の弱点を克服、進化を続ける目標に対して、有効な手段は死なばもろとも。MAGIと心中してもらうしかないわ」

ミサト
「MAGIシステムの物理的消去を提案します」

リツコ
「無理よ、MAGIを切り捨てることは、本部の破棄と同義なのよ」

ミサト
「では、作戦部から正式に要請するわ」

リツコ
「拒否します。技術部が解決すべき問題です」

ミサト
「なに意地張ってんのよ!」

リツコ
「私のミスから始まったことなのよ」

ミサト
「あなたは昔っからそう。一人で全部抱え込んで、他人を当てにしないのね」

リツコ
「…使徒が進化しつづけるのなら、勝算はあります」

ゲンドウ
「進化の促進かね」

リツコ
「はい」

ゲンドウ
「進化の終着地点は自滅、死、そのものだ」

冬月
「ならば、進化をこちらで促進させてやればいいわけか」

リツコ
「使徒が死の効率的な回避を考えれば、MAGIとの共生を選択するかもしれません」

マコト
「でも、どうやって?」

リツコ
「目標がコンピューターそのものなら、CASPERを使徒に直結、逆ハックを仕掛けて、
自滅促進プログラムを送り込むことができます。が、」

マヤ
「同時に使徒に対しても防壁を開放することにもなります」

ゲンドウ
「CASPERが早いか、使徒が早いか、勝負だな」

リツコ
「はい」

ミサト
「そのプログラム、間に合うんでしょうね。CASPERまで侵されたら、終わりなのよ」

リツコ
「約束は守るわ」

アナウンス
「R警報発令、R警報発令、NERV本部内部に緊急事態が発生しました。D級勤務者は、全員待避してください」

マヤ
「な、何ですか、これ」

リツコ
「開発者の悪戯書きだわ」

マヤ
「すごい、裏コードだ!MAGIの裏コードですよ、これ!」

ミサト
「さながら、MAGIの裏技大特集、ってわけね」

マヤ
「わぁ~、こんなの見ちゃっていいのかしら…わぁ!びっくり!これなんて、intのCよぉ!」

マヤ
「これなら、意外と早くプログラムできますね、先輩!」

リツコ
「うん…ありがとう、母さん…確実に間に合うわ」

リツコ
「レンチ取って」

ミサト
「大学のころを思い出すわね…」

リツコ
「25番のボード」

ミサト
「ねぇ、少しは教えてよ、MAGIのこと」

リツコ
「長い話よ。その割に面白くない話」

リツコ
「人格移植OSって知ってる?

ミサト
「ええ、第7世代の有機コンピュータに個人の人格を移植して思考させるシステム。EVAの操縦にも使われている技術よね」

リツコ
「MAGIがその第1号らしいわ。母さんが開発した、技術なのよ」

ミサト
「じゃ、お母さんの人格を移植したの?」

リツコ
「そう」

リツコ
「言ってみれば、これは、母さんの脳味噌そのものなのよ」

ミサト
「それでMAGIを守りたかったの?」

リツコ
「違うと思うわ。母さんのこと、そんなに好きじゃなかったから。科学者としての判断ね」

マコト
「きたっ!」

 

この時 悪戯書きの中に「碇のバカヤロー」というのがある。リツコの母 赤城ナオコが書いたものだろう。他の裏コードと違い「碇のバカヤロー」だけはマジックで書いてある。


1秒の余裕をもって無事回避 

アナウンス
「人工知能により、自律自爆が解除されました」

シゲル・マコト
「いゃったぁーッ!」

アナウンス
「なお、特例582も解除されました。MAGIシステム、通常モードに戻ります」

リツコ
「もう年かしらね、徹夜がこたえるわ」

ミサト
「また約束守ってくれたわね。お疲れさん」

リツコ
「ありがとう」

リツコ
「ミサトの入れてくれたコーヒーを、こんなに美味いと思ったのは始めてだわ」

ミサト
「う…ふ…ふん…」

リツコ
「死ぬ前の晩、母さんが言ってたわ。MAGIは三人の自分なんだって」

リツコ
「科学者としての自分、母としての自分、女としての自分。その3人がせめぎあってるのが、MAGIなのよ」

リツコ
「人の持つジレンマをわざと残したのね」

リツコ
「実はプログラムを微妙に変えてあるのよ」

リツコ
「私は母親にはなれそうも無いから、母としての母さんは分からないわ」

リツコ
「だけど、科学者としてのあの人は尊敬もしていた」

リツコ
「でもね、女としては憎んでさえいたの」

ミサト
「今日はお喋りじゃない…」

リツコ
「たまにはね…」

リツコ
「CASPERにはね、女としてのパターンがインプットされていたの。最後まで女でいることを守ったのね、ほんと、母さんらしいわ」

 

次回 第拾四話「ゼーレ、魂の座」
ネルフ、そして人類補完計画を裏で操っている秘密結社ゼーレ。
碇シンジの行動は その死海文書の実現に過ぎないのか?
(第拾四話の予告ナレーション)

 

ミサトに MAGIのこと教えてと言われ、珍しく饒舌になるリツコ。MAGIはリツコの母 赤城ナオコの脳みそそのもので 人格までも移植してある。


赤城ナオコにとって MAGIは3人目ので、科学者として 母として 女としての部分がせめぎ合い人の持つジレンマをわざと残してあるが「プログラムを微妙に変えてあるのよ」というリツコの言葉の本意までは分からない。

 

ちなみにMAGIシステムは、カスパー、バルタザール、メルキオールと名付けられた独立した3つのシステムから構成されている。そのシステムの名前は、新約聖書に登場する、キリストの生誕を祝うためにやって来た「東方の三賢者」が由来になっている。

 

MAGIシステムは、科学者・母親・女として それぞれの赤城ナオコの思考パターンを通して 多数決で判断を下すところが 通常のコンピピューターとは違い 人の持つジレンマを残したということなのかもしれない。

「苦しい親子関係」から抜け出す方法

 

科学者としては尊敬していたが女としては恨んでいたリツコの母親に対する思い

 

ネルフで働き始める前、リツコは祖母のところに預けられており 母の赤城ナオコとは手紙のやり取りがあったが、母親らしいことはそれ以外はなかっただろうと思われる。

 

MAGIが完成した後、リツコはネルフの母親の元で働き始めるが 母親ナオコとゲンドウの男女の関係に気づいてしまう。なお、赤城ナオコの夫 リツコの父親に関しては アニメには出てこないので不明である。

 

MAGIを開発した赤城ナオコは優秀な科学者であり リツコは「科学者としてのあの人は尊敬もしていた」と言っている。しかし 女としての母親を知ってしまったとき 娘としてはどんな子持ちだったのか?

 

しかもそれは愛人という形であり 娘の立場からしたそこに母親のカケラも見いだせず、妙に生々しく不潔だと感じたかもしれないし、気持ち悪いとさえ思ったかもしれない。

 

子どもにとっては 生まれてからずっと 親は親としか見ていないわけで、いきなり父親の男の部分や 母親の部分を部分を見てしまったら ショックを受けるであろうことは容易に想像できる。

 

科学者としては尊敬していても 母親の女の部分を見てしまったリツコは そんな母親を嫌うようになる。ミサトに対して「でもね、女としては憎んでさえいたの」という告白の通りだ。

 

そんなリツコが 母親と同じようにゲンドウと関係をもってしまう。ゲンドウと愛人関係だった母親を嫌い憎んでさえいたのに、自分自身も同じような道を歩むことになる。

 

子どもが育つ過程で あんな親にはなりたくないと思うような環境であっても、大人になってから あんなに嫌っていた親と同じことをしている自分に気づく なんてことも多々ある。

何かを極端に嫌ったり恨んだりするのは それなりにエネルギー量が大きいので 逆にその状況を引き寄せてしまうのかもしれないが、嫌だと思っているのに 気づいてみればその真っただ中にいるというのは、人としてのジレンマや 人の心の不思議なのかもしれない。

気づけない毒親