ミサトも知らないリツコの確信は

 

エヴァンゲリオン TVシリーズ

第拾六話 「死に至る病、そして」より

EPISODE16:Splitting of the Breast

「レリエル」に取り込まれてしまうシンジ

 

 

パイロットの生死は問わないというリツコ

 

シンジ 
「眠る事がこんなに疲れるなんて、思わなかったな…」

シンジ 
「やっぱり真っ白か…レーダーやソナーが返ってこない。空間が広すぎるんだ」

シンジ 
「生命維持モードに切り替えてから12時間…僕の命も後4、5時間か…お腹空いたな…」

ミサト 
「じゃああの影の部分が使徒の本体なわけ?」

リツコ 
「そう、直径680メートル、厚さ約3ナノメートルのね。その極薄の空間を、内向きA.T.フィールドで支え、内部はディラックの海と呼ばれる虚数空間」

リツコ 
「多分、別の宇宙につながっているんじゃないかしら?」

ミサト 
「あの球体は?」

リツコ 
「本体の虚数回路が閉じれば消えてしまう。上空の物体こそ、影に過ぎないわ」

ミサト 
「初号機を取り込んだ、黒い影が目標か…」

アスカ 
「そんなの、どうしようもないじゃん」

BGM

シンジ 
「ん?…水が濁ってきてる!?浄化能力が落ちてきてるんだ!」

シンジ 
「うっ!…生臭い!血?血の匂いだ!」

シンジ 
「生命維持モードに切り替えてから12時間…僕の命も後4、5時間か…」

シンジ 
「開けて!ここから出して!ミサトさんどうなってるんだよ、ミサトさん!アスカ!綾波!…リツコさん……父さん…………」

シンジ 
「お願い、誰か、助けて…」

BGM停止

ミサト 
「EVAの強制サルベージ?」

リツコ 
「現在、可能と思われる、唯一の方法よ」

リツコ 
「992個、現存する全てのN2爆雷を、中心部に投下」

リツコ 
「タイミングを合わせて残存するEVA2体のA.T.フィールドを使い、使徒の虚数回路に1000分の1秒だけ干渉するわ」

リツコ 
「その瞬間に、爆発エネルギーを集中させて、使徒を形成するディラックの海ごと破壊する」

ミサト 
「でもそれじゃあEVAの機体が…シンジ君がどうなるか…救出作戦とは言えないわ」

リツコ 
「作戦は初号機の機体回収を最優先とします。たとえボディーが大破しても構わないわ」

ミサト
「ちょっと待って!」

リツコ 
「この際、パイロットの生死は問いません」

ミサト 
「!」

リツコ 
「シンジ君を失うのは、あなたのミスなのよ!それ、忘れないで!」

ミサト 
「碇司令やあなたが、そこまで初号機にこだわる理由は何?」

ミサト 
「EVAって何なの!?」

リツコ 
「あなたに渡した資料が全てよ!」

ミサト 
「嘘ね!」

リツコ 
「ミサト、私を信じて」

リツコ 
「この作戦に付いての一切の指揮は、私が執ります」

リツコ 
「関空には便を廻すわ。航空管制と空自の戦略輸送団にも連絡を」

ミサト 
(セカンドインパクト。補完計画。まだ、まだ私の知らない秘密があるんだ…)


シンジは生きることに否定的なように
「生命維持モードに切り替えてから12時間…僕の命も後4、5時間か…」と。
それでも体の欲求には抗えず「お腹空いたな…」とつぶやく

 

そんなシンジは地上のやり取りを知る由もない

 

この状況を打破するため リツコは
「この際、パイロットの生死は問いません」と断言する。
ミサトにとっては青天霹靂ともいえる状況だ。

 

しかも
「シンジ君を失うのは、あなたのミスなのよ!それ、忘れないで!」
と言われてしまう。
なのにリツコは

「ミサト、私を信じて」とも言う。

 

ミサトが知らないことがまだまだあるようだが リツコは何を知っているというのか。
何を根拠に確信めいたことを言えるのか。

 

それは リツコのゲンドウへの思いなのか。
それとも科学者としての確信なのか。
または根拠のない確信なのか。

 

この段階では明らかにされることは何もないが リツコの確固たる確信だけがある。
なにがリツコをそうさせているのかはわからないままだ。

信じる力  ― あなたの人生は、あなただけのもの

 

生きることが否定的に見えるシンジ

 

「生命維持モードに切り替えてから12時間…僕の命も後4、5時間か…」
と言って 生きることに否定的に見えるが 生臭い血の匂いに
「開けて!ここから出して!ミサトさんどうなってるんだよ、ミサトさん!アスカ!綾波!…リツコさん……父さん…………」
「お願い、誰か、助けて…」と 絞り出すようにつぶやく。

 

気持ちは生きることに否定的でも 体は生きることを求めるのか。
シンジの否定的な言葉は 本当は生きたい気持ちの裏返しなのか。

 

みんなの名前を呼んだあと 最後に「父さん…………」とつぶやく。

 

切っても切れない親子の縁。
母親のユイ亡き後 シンジにとって血のつながった家族はゲンドウだけだ。

 

他の人にどんなに褒められようが やはり最終的には親に認められたい。
どんな仕打ちを受けても 求めてしまう悲しい現実。

 

親子の関係は 生まれて初めて人間関係のコミュニケーションを学ぶ場なのに それがきちんと構築されていないと求め続けてしまう。
はたから見れば もういい加減諦めればと思っても 本人はそう簡単にはいかない。

 

親に虐待されている子供が 悪いのは自分で親は悪くないと思う心理に通じるものがある。最初にインプットされたものは 人生を通して影響を受ける。

 

ネガティブなものはリセットしない限りなくならない。
厄介なのは自分自身で認識することから始めなければならないこと。

 

これを自分自身で認識して受け入れることは 本人にとってはとてもしんどい作業になる。よほどのコミットメントがないと逃げ出したくなる。
 
この時のシンジに対して 早く楽になってほしいと願うばかりだ。

親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ